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Zenn, しずかなインターネットを開発した catnose さんのお話がとても面白かった

2024-01-25

#感想#オンラインイベント#個人開発

こんにちは、 @zomysan です。先日開催された 「Zenn,しずかなインターネット「どうやって開発したの?」開発者catnoseさんにきいてみた」 に参加しました。

catnoseさん(@catnose99)は、ポートフォリオ作成サービス「RESUME」、技術情報共有サービス「Zenn」、簡単にAIサービスがつくれる「だれでもAIメーカー」、文章投稿サービス「しずかなインターネット」など、数々のプロダクトを世に送り出しているソフトウェアエンジニアです。以前から catnose さんのプロダクトの洗練されたやわらかいデザイン、コンセプトの筋がしっかり通った体験に惹かれており、catnose さんがどんなことを考えてものを作っておられるのかとても興味がありました。

今回のイベントでは、catnoseさんの開発における洞察や経験について深く学ぶことができ、非常に刺激的な体験となりました。この記事では、そんなcatnoseさんの話から学んだことや、私自身の開発経験との関連性について綴ります。

印象に残ったこと

ここからはイベントの中でとくに印象に残ったトピックについて、関連して考えたことなども織り交ぜながら書いていきます。

SNS と距離を置くメリット

一番インパクトがあったのが、「Twitterなんかでお役立ち情報みたいなのを発信してしまうと、それでバーっとRTとかいいねがもらえて、そこでいい仕事をしたような気持ちになってしまう。なのでそれは意識的に避けて、開発に集中する」といった主旨のお話でした。

SNSと距離を置く理由としては「ダラダラと時間を使ってしまうから」みたいなことがよく挙げられるものですが、この「インスタントな承認を得ないため」というのを教えてくれる人ってあんまりいないんじゃないかと思います。catnoseさんくらいになるとフォロワーも関心を持っている人も多く、発信したことの受け止められ方もリアクションもとても大きくて、得られる承認みたいなものもものすごい量だと思います。その中でたんたんと開発を続けて何度もリリースまで辿り着くというのは、やっぱりそういったインスタントな満足感を得てしまうことを意識的に避けてたんだ、という納得がありました。

サービス名のインパクトが開発にもたらすもの

早い段階で「しずかなインターネット」というサービス名を思いつき、この名前がかなり強くて、すべての指針になってくれた、というエピソードがとてもよかったです。もう全部しずかにしたらいい!という言い方にちょっと笑ってしまいましたが、これってめちゃくちゃ大事なことだよなあと感動しました。

アイデアを持つウェブエンジニアがこれだけたくさんいる世の中で、とくに個人開発では「そこにかける思いがあるか」「そのアイデアに一本筋が通っているか?」ってことが、開発のモチベーションとしても提供する意味としてもとても大きいと思います。イケてる用語で言うと、いわゆる「コンセプト」とか、インセプションデッキの「我々はなぜここにいるのか?」「エレベーターピッチ」「パッケージデザイン」あたりなのかなと思います。

そういった思いをそのままサービス名にする必要はないのかもしれませんが、「しずかなインターネット」の場合、筋の通った思いがそのままあらわれたサービス名があったわけで、デザインも開発も機能の取捨選択も全部それに従っていけばいいわけで、考えることがとてもシンプルになったんじゃないかなと想像できます。「迷ったらしずかな方」って決めたらいいっていうのはすごい。

ちなみに「しずかなインターネット」の編集画面を閉じるなどして離脱するとき、「このページを閉じてもよろしいでしょうか?」みたいな離脱防止モーダルは出ません。かわりに、ふたたび編集ページを開いたときに、編集していた内容がそのまま復帰します。たしかに離脱防止モーダルってうるさいですよね!圧倒的しずかさです。

アイデアを思いつくことについて

catnoseさんのアイデアは日常の困りごとや「こうだったらいいのに」という思いから週1くらいで生まれるとのこと。言葉でいうと簡単だけど、「こうだったらいいのに」にちゃんと気づくのはとても難しいことだなと思います。

というのも、私自身自分の「こうだったらいいのに」に気づけなかった経験があるからです。このポートフォリオサイト兼ブログは去年できたばかり。いろいろなことを考えて Astro を選定し、自分の気にいるようレイアウトを整え、日々せっせと記事を増やしています。記事を書くときはVitual Studio CodeでMarkdownファイルを開き、プレビューで読み返しながら書くのですが、なんとなく筆が乗りづらいなと感じていました。

そんなタイミングで今回のお話を聞くことになったんですが、冒頭にcatnoseさんから「日記をエディタで書く体験があんまりよくなかった体験から”しずかなインターネット”を作った」というお話がありました。そのとき、私もVitual Studio Codeでブログ書くのツラいって感じてるわ!と衝撃を受けました。自分自身の不快に気づいてなかったことにそのときはじめて気づいたわけです。

自分の「こうだったらいいのに」に気づくには、いろんな要素が必要になると思います。まずは自分の「なんか嫌だな」とか「なんかしんどいな」という気持ちを無視せず、今すぐ対応できることじゃないとしてもその感覚を受け止めることが必要です。そしてそれにはそれなりにゆとりが必要になります。最後に変えられることを信じるというか、「これってなんとかできるんじゃないか」みたいな気持ちを持つことではじめて「こうだったらいいのに」が生まれてくる気がしています。catnoseさんは自分のそういう感覚と繊細にしっかり付き合って生きてるんだなあ、と改めて感じました。

今回私がVitual Studio Codeのまま頑張ってしまったのは、「せっかく自分のWebサイトを作ったんだし、この仕組みはイケてるはずだし、良い選択のはずだ」と思い込んだのが大きいと思います。実際これまでのブログより高速でレスポンスもよくセキュリティ的にも安心な構成にできたのは良かったですが、それで一番大事な自分の「書く」ことの体験を損ねてしまっては元も子もなかったです。もうちょっと自分の身体感覚や違和感に気づけるようにしていきたいなと感じました。

今はこの文章を「しずかなインターネット」のエディタで書いてVisual Studio Codeに貼り付けています。それでええんかって感じなんですが、とりあえずはこれで……

おわりに

今回のイベントに参加し、catnoseさんの開発者としてのモチベーションや集中のしかた、サービス実装までの流れなどが聞けて大変面白かったです。また自分のアプリケーションを作っていくモチベーションも高まり、これからもいろんなものを作っていきたいという気持ちが高まりました。

最後になりましたが、このイベントを企画してくださったFindyさん、また貴重なお話をしてくださったcatnoseさんに心から感謝を申し上げます。